経営情報

対処すべき課題

中長期的な会社の経営戦略と優先的に対処すべき課題

今後のわが国経済は、新型コロナウイルス感染症対策と社会経済活動の両立により正常化が進展し、景気は回復傾向が続くものと思われるが、ロシア・ウクライナ情勢についても未だに収束までの道筋は見えない状況において、原材料価格・エネルギー価格の高騰など様々な景気下振れリスクも排除することはできず、先行きは依然として不透明な状況となっている。

このような状況のもと、当社グループでは2021年度から2023年度における3か年の中期経営計画を実行中であり『未来を切り開く、快適環境のソリューショングループをめざして』を基本テーマとして掲げ、急激に変化する社会環境に主体的に対応し、未来志向で事業の発展に取り組んでいく。

(新型コロナウイルス感染拡大防止への対応)
新型コロナウイルスについては、政府により感染症法上の位置づけが「5類」へと移行され、今後はさらに感染対策と社会経済活動との両立が進展するものと思われる。しかし、「5類」に移行しても、新型コロナウイルスの感染力や病原性が変わるわけではなく、当社グループにおいては引き続き、基本的な感染予防対策を行い、全てのステークホルダーの安全確保と感染拡大防止を最優先に考えた取り組みを行っていく。

(気候変動リスクへの対応)
当社グループでは、気候変動リスクへの対応を早急に解決すべき重要課題だと捉えており、「2050年BXグループ脱炭素宣言」を表明し、脱炭素へ向けた本格的な取り組みを推し進めている。温室効果ガスの排出削減等に取り組む“緩和”の側面としては、「グループ環境方針」に則った事業活動におけるエネルギー使用の合理化及び電気需要の平準化等の従来からの継続した取り組みに加えて、SBT(民間企業における科学的根拠に基づいた温室効果ガスの排出量削減目標の設定)認証取得に向けて、社用車両のEV・HV化及び事業所における再生エネルギー電力の調達並びに「新物流システム」の導入による積載効率の向上等をはじめとした具体的な取り組みを推し進めている。また、商品開発分野においては、薄板化によって材料重量を削減するとともに接着工法によってCO2排出量削減を実現した環境配慮型スチールドア「SGD」やブラインド機能によって冷暖房効率を向上させる電動ブラインドシャッター「マドマスターソラル」などを新たに加え、環境配慮商品のラインアップをさらに拡充させている。一方で、変化する気候の影響を将来にわたり回避・軽減する“適応”の側面としては、社会問題化しているゲリラ豪雨や集中豪雨等による建物等の防災ソリューションとして、公共団体や企業のBCP支援、店舗や住宅の浸水被害対策など、多様な場所や用途に対応できる止水関連商品に加え、新たに強風対策商品についてのラインアップを拡充し、お客様・利用者様等への適時的確なご提案を推し進めている。

(多様な働き方支援への取り組み)
当社グループでは、全ての従業員が働きがいをもって業務に従事できるよう、多様な働き方を支援する取り組みを推し進めている。「労働時間の見える化」による長時間労働の抑制やICT(情報通信技術)環境の整備による在宅勤務・リモートワークの実施、業務効率や生産性向上をさらに追求するためのDXへの取り組み、職種や生活環境に合わせて効率的に業務を行うフレックスタイム制度の導入等を行うとともに、育児休業制度や介護休業制度など、従業員のワークライフバランスを重視し個々人のライフスタイルに柔軟に対応できる人事制度の拡充など、性別や国籍等の別なく全ての従業員が活躍できる職場環境の構築に取り組んでいる。また、働く仲間を尊重しあう風土づくりをめざし、差別やハラスメントについての正しい知識を身につけるための教育や研修等についても積極的に取り組むとともに、「企業の価値は、従業員一人ひとりの人材力の和である」との考えから、問題解決能力やイノベーション力など、総合的な人材力向上に向けた研修プログラムも構築していく。なお、当社では、従業員が安心して長期的に働ける環境を整備する取り組みの一環として、従業員の定年年齢を2023年度から2年毎に1歳ずつ引き上げ、2031年度に65歳まで引き上げると同時に、定年後の再雇用上限年齢についても段階的に70歳まで引き上げることを決定した。今後も世代を問わず多様な人材が活躍できる環境づくりに積極的に取り組んでいく。

(CSRの推進について)
当社グループでは、事業活動の原点である「社是(誠実・努力・奉仕)」をはじめとして、「経営理念」や「CSR憲章」を常に意識して事業に取り組んでおり、全ての法令を順守し、公正な事業環境の中で利潤を追求すること、事業活動を通じて広く社会に貢献することが社会との信頼関係を構築することであると強く認識しており、コンプライアンス体制整備に恒常的に取り組んでいる。また、企業の持続的成長・発展のための重要なテーマであるESG(環境・社会・ガバナンス)及びSDGs(持続可能な開発目標)を重視しながらCSR(企業の社会的責任)を一層積極的に推し進めていくことで、当社グループの企業価値向上と持続可能な社会の発展に向けた取り組みを強化していく。

サステナビリティに関する考え方及び取組

当社グループのサステナビリティに関する考え方及び取組は、次の通りである。
なお、文中の将来に関する事項は、当連結会計年度末現在において当社グループが判断したものである。

Ⅰ サステナビリティ
当社グループでは、社是・経営理念を実現するため、CSR4憲章に基づき、組織的、体系的に活動を推進している。また、CSR4憲章とSDGsが掲げる17の目標を照合し、人権の尊重をはじめ、環境への取り組みや地域社会との共創など、当社グループが優先的に取り組むべき重要課題を、「CSR4憲章マテリアリティ」として設定している。当社グループは長期ビジョンである「快適環境」を具現化する価値の提供により地球環境や社会課題に対応し、持続的な企業価値の向上と持続可能な社会の実現に貢献していく。

<ガバナンス>
当社では、CSR憲章に基づいた活動全般をBXグループ全体で推進するサステナビリティ委員会を設置している。サステナビリティ委員会は業務担当役員が委員長を務め、気候変動を含む地球環境をはじめ、地域社会、社会貢献、人権、労働、コンプライアンスなど、サステナビリティ・CSR全体の施策立案、目標設定、活動モニタリング、教育・啓蒙等を担い、またそれらに関する情報や結果などを常務会を通して取締役会に報告している。
常務会は代表取締役が決裁を行うための任意の諮問機関として、取締役会付議議案や報告事項について事前に審議することになっている。
取締役会はサステナビリティ委員長である業務担当役員より、当社の事業や財務に与えるリスクと機会について定期的、かつ適宜報告を受け、その内容について審議・評価を行う。

<戦略>
当社グループでは、2007年に社是・経営理念に基づいた「CSR憲章」を掲げ、それを実践するための「CSR行動指針」を定めCSR活動をスタートした。以来「CSR憲章」の4テーマごとに重要なCSR課題について年度目標を定め、定期的に進捗を確認し、PDCAサイクルを運用することで着実に活動を展開してきた。
近年、企業の長期的な成長のためには、ESG(環境・社会・ガバナンス)が示す3つの観点が必要だという考え方が世界的に広まってきている。当社グループでは、CSR4憲章に取り組むことがこれらESG分野の課題に真摯に向き合うことであるという観点から、企業価値そのものを高めていく意味のCSR経営を推進することで、社会的な責任を果たしていきたいと考えている。

●CSR4憲章
当社グループは「快適環境のソリューショングループ」をビジョンに掲げ、現役世代の私たちも、将来世代も、健全な地球環境の下で安心・安全で快適な暮らしをおくるための価値提供に取り組んでいる。当社グループがめざす社会は、SDGsの目標である「人と地球の持続可能な社会の実現」と共鳴するものであり、CSR4憲章に基づいた「持続的な経済の成長」「持続的な社会の形成」「持続的な地球環境保全」「働く仲間の幸せを追求」の4本柱でそれぞれに重点課題を特定し、取り組みを進めている。


●CSR4憲章マテリアリティ
当社グループでは、社会的重要度と、当社グループの成長・発展について影響度を評価し、優先して取り組むべき課題をマテリアリティとして特定、PDCAサイクルを運用し、取り組みを推進している。
各施策の進捗は、「成長と共に委員会」「社会と共に委員会」「地球と共に委員会」「働く仲間と共に委員会」の各委員会でモニタリングされ、サステナビリティ委員会に報告される。

<リスク管理>
サステナビリティに関するリスクと機会については、定期的に開催されるサステナビリティ委員会において、リスクと機会のモニタリング、評価及び重要なリスクの特定を行っている。特定されたリスクについては、サステナビリティ委員会による対応策の検討を経て、常務会、取締役会に報告、提言される。

<指標及び目標>
当社グループでは、CSR憲章に定められている“地球と共に”“社会と共に”“働く仲間と共に”“成長と共に”の各々の精神のもと、当社グループの全役員、従業員等が「低炭素社会」「循環型社会」など持続可能な社会の実現及び地球環境の保全を目指した取り組みを行っている。国際社会における共通の目標であるSDGsと当社グループの社是・経営理念・CSR憲章等との関係性を踏まえ、事業経営と社会貢献の両側面から、当社グループが取り組むべき課題を抽出した重点課題(マテリアリティ)を設定し、全グループメンバーが積極的に取り組む体制の構築を図っている。

●サステナビリティマネジメント
当社グループでは、国際社会の共通目標であるSDGsとCSR4憲章の関係性を整理し、事業と社会の両側面から、当社グループが重点的に取り組むべき課題を抽出したマテリアリティを設定している。
指標及び目標の詳細については、「BXグループサステナビリティレポート」を参照。

サステナビリティに関する取組み内容の詳細については、「BXグループサステナビリティレポート2022」を発行し、当社WEBサイトで開示を行っている。なお、「BXグループサステナビリティレポート2023」の発行は2023年10月を予定している。

<BXグループサステナビリティレポート>
  https://www.bunka-s.co.jp/csrinfo/csr2022/repo/

Ⅱ 個別項目
1.気候変動
当社がめざす人と地球の「快適環境」は、健全な地球環境の上に成り立つものであり、気候変動を含む環境問題への対応を重要な経営課題の一つとして位置付けている。当社は2021年10月に、TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明しており、その提言に基づき気候変動が事業活動に与える影響について、積極的な情報開示を推進していく。

<ガバナンス>
当社では、CSR憲章に基づいた活動全般をBXグループ全体で推進するサステナビリティ委員会を設置している。サステナビリティ委員会は業務担当役員が委員長を務め、気候変動を含む地球環境をはじめ、地域社会、社会貢献、人権、労働、コンプライアンスなど、サステナビリティ・CSR全体の施策立案、目標設定、活動モニタリング、教育・啓蒙等を担い、またそれらに関する情報や結果などを常務会を通して取締役会に報告している。
常務会は代表取締役が決裁を行うための任意の諮問機関として、取締役会付議議案や報告事項について事前に審議することになっている。気候変動が当社の事業活動や財務に与えるリスクと機会などについても、取締役会への報告等を行う場合は、事前に常務会における審議を要することとしている。
取締役会はサステナビリティ委員長である業務担当役員より、気候変動が当社の事業や財務に与えるリスクと機会について定期的、かつ適宜報告を受け、その内容について審議・評価を行う。

<戦略>
当社では、世界共通の重要課題である地球温暖化防止に貢献するために、2021年5月に「BXグループ2050年脱炭素宣言」を定め、2030年までに事業活動におけるCO₂排出量を46.2%削減(2019年度比)、2050年までに実質ゼロにすることを宣言した。2022年5月にはグループ環境ビジョン「Blue neXpand 2050 未来にひろげよう青空を」を策定、「気候変動」「資源循環」「自然共生」を重点領域として、環境負荷をゼロにするだけでなく、事業活動を通じて環境へのプラスの価値を創造することで「快適環境」を次世代へとつなぐことをめざしている。
2023年度までの中期経営計画では、快適環境を追求した新たな価値の創造をめざし、今後の成長を担う注力事業として「エコ&防災事業」を推進、地球温暖化の緩和に貢献する環境配慮商品と、気候変動リスクに適応するための防災関連商品の拡充に取り組んでいる。
また、気候変動に関する事業への影響を把握し、中期経営計画における戦略の有効性や気候関連リスクと機会に対するレジリエンス向上を目的として、「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が公表した複数のシナリオを参照の上、財務的影響及び事業インパクトを評価し、シナリオ分析を実施している。

●シナリオ分析
当社では気候変動の問題を経営上の重要な影響を及ぼすリスクと機会と捉え、自社の事業戦略に大きな影響を及ぼすとの認識のもと、主力事業であるシャッター及びドア事業における気候変動に伴うリスクと機会を2℃未満シナリオと4℃シナリオの2つのシナリオにて分析し、それぞれのシナリオにおける移行リスク、物理リスクそして機会を特定している。特に自社にとってインパクトが大きいと想定される要因については、財務インパクトに関する分析を実施し、財務インパクトの分析では、一定の前提のもと、2050年までの損益計算書(PL)・貸借対照表(BS)・キャッシュ・フロー計算書(CF)のシミュレーションを実施し、特定したドライバーのPL・BS・CFへの影響度とその重要性を評価している。
シナリオ分析に基づいた気候関連リスクと機会の評価結果は、影響度、発生可能性等を考慮し、事業戦略に反映している。特に影響が大きいと評価したリスクと機会、及びそれぞれの対応策の進捗状況は次の通りである。

シナリオ名 想定する世界観
2℃未満シナリオ
(SSP1-2.6)
環境規制が強化され、ZEB・ZEH水準の建物が普及。省エネ性が高い商品、再エネサービスの需要が増加している。
4℃シナリオ
(SSP5-8.5)
環境規制は現状のレベルを維持し、ZEB・ZEH普及は大きくは進展しない。一方、自然災害の頻発化から、防災・減災製品の需要が増加している。

事業/財務インパクトの影響度評価
 大:事業戦略への影響または財務的影響が大きいことが想定される
 中:事業戦略への影響または財務的影響が中程度と想定される
 小:事業戦略への影響または財務的影響が小さいことが想定される

<分析結果・対応の実施進捗状況>
気候変動は事業リスクのみならず、エコ&防災事業を推進する当社にとって企業価値を向上させる機会につながると認識している。温暖化に起因する異常気象や、自然災害の増加・甚大化による社会への影響を背景に適応ビジネスへの期待が高まっており、当社が推進する防災事業においては、さらなる需要の高まりを見込んでいる。
さらに、2022年4月に販売を開始したブラインド機能を有した住宅用の電動ブラインドシャッター「マドマスターソラル」は、使用するお客様のCO₂排出量削減対策として、また2023年4月に販売を開始した環境配慮型のスチールドア「SGD」は、製造過程及び運送におけるCO₂排出量削減対策として、気候変動の緩和に貢献する環境配慮商品である。
2023年3月に公表された最新の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」第6次報告書では、蓄積したCO₂による気温上昇は避けられず、地球温暖化の脅威への世界的な対応の強化を提起していることから、今後さらに気候変動の緩和に貢献する環境配慮商品の需要が高まるものと見込んでおり、当社のエコ事業で推進する緩和ビジネスが、企業価値向上の新たな機会となることを期待している。

<リスク管理>
当社では、気候変動の問題を経営上の重要な影響を及ぼすリスクと機会と捉え、サステナビリティ委員会の気候変動チームが各種会議体を通した気候変動リスクと機会のモニタリング、評価及び重要なリスクと機会の特定を行っている。気候変動チームはCSR統括部を中心に、経営企画部、製造企画部、人事総務部、経理部のメンバーによって構成されている。
気候変動リスクと機会の特定にあたり、気候変動チームはCSR統括部主導のもと、気候変動に関するシナリオ分析を実施している。シナリオ分析から導出された重要なリスクと機会についてはサステナビリティ委員会での検討を経て、常務会、取締役会に報告、提言される。
なお、シナリオ分析で試算した財務インパクトは、一定の前提条件を元に試算しており、現時点では発生の蓋然性について判断が困難な要素も分析に織り込んでいる。気候変動チームでは、今後の経済情勢や日本及び世界の気候変動に関する取組みを鑑み、一定程度蓋然性が高くなると考えられる要素について、具体的に事業計画に織り込むようサステナビリティ委員会にて検討を行い、常務会、取締役会に進言する役割を担っている。

<指標と目標>
当社では、長期ビジョンで掲げる「快適環境ソリューショングループ」を実現するために、快適に過ごせる健全な地球環境を取り戻すことを目的に事業の脱炭素化に取り組み、持続可能な社会の構築に貢献する。その目的を達成するために、2021年5月に「BXグループ2050年脱炭素宣言」を公表した。
シナリオ分析から導出された結果並びに今後必要となる対応策と、脱炭素宣言で想定している取り組みは整合的である旨、確認できた。グループ一丸となり以下に掲げる2050年・2030年目標に向けて取り組みを加速することで、持続可能な社会の構築に貢献していく。
なお、2030年に向けたCO2削減目標については、現在SBTに認定を申請している。

●2050年指標と目標
・BXグループが事業活動で排出するCO2(Scope1及びScope2)を実質ゼロにする ・サプライヤーと協力・連携し、サプライチェーン全体でCO2削減に取り組む

●2030年指標と目標(SBT1.5℃目標)
・Scope1及びScope2 46.2%削減(2019年度比) ・Scope3 購入した製品・サービス(カテゴリ1)及び輸送・配送(カテゴリ4)27.5%削減(2019年度比)

Ⅲ 人的資本
<ガバナンス>
当社では、CSR憲章にもとづいた活動全般をBXグループ全体で推進するサステナビリティ委員会を設置している。サステナビリティ委員会は業務担当役員が委員長を務め、全体のコンプライアンスをはじめ、CSR4憲章マテリアリティの特定などCSR活動全体の教育・啓蒙、人権、気候変動が及ぼす財務への影響の特定や人的資本開示に伴うワーキンググループの活動、またそれらに関する情報や結果などを常務会を通して取締役会へ報告している。
常務会は代表取締役が決裁を行うための任意の諮問機関として、取締役会付議事項案や報告事項について事前に審議することになっている。人的資本に関する指標、目標及び実績などについても、取締役会への定期的な報告等を行う場合は、事前に常務会における審議を要することとしている。
取締役会は定期的にサステナビリティ委員長である業務担当役員より、人的資本に関する指標、目標及び実績についての報告を受け、その内容について審議・評価を行う。

<戦略>
1.人材の多様性の確保を含む人的資本に関する方針
①経営理念等について
当社グループでは、「人と地球の快適環境」を創造することをめざしており、その実現に向けては、創業の精神である「社是(誠実・努力・奉仕)」をはじめとして、企業活動における行動指針である「経営理念」の考え方を共有した人材が重要な事業基盤の一つであると認識している。
なお、当社グループの企業風土であり従業員としての心構えである「明・元・素(明るく、元気に、素直)」は、求める人材や人材の確保・育成、ひいては当社グループの成長には欠かせない要素であると考えている。

②CSR憲章「働く仲間と共に」
当社グループでは、前述の「社是」や「経営理念」といった企業文化を体現できる人材の育成に注力し、それらの育成を通じて成長した人材を社内の重要なポジションへ登用するなど、従業員一人ひとりの人材力の総和により、事業基盤の強化を図ることが持続的な成長、ひいては企業価値の向上につながると考えている。
さらに、人材に関する基本的な考え方としては、「CSR憲章」の「働く仲間と共に」において、働く仲間の個性と創造性を尊重し、一人ひとりの満足と成長をめざしている。また、「CSR行動指針」では「人権の尊重」、「雇用の創出」、「満足度の向上」を掲げ、従業員が実践することでエンゲージメント(従業員一人ひとりが企業の掲げる「戦略・目標」に共感し、自発的に貢献する意欲)の向上を図っている。

③中期経営計画の概略
現在、「社是」、「経営理念」、「CSR憲章」等を踏まえた3か年の中期経営計画を実行中であり『未来を切り開く、快適環境のソリューショングループをめざして』を基本テーマとして掲げ、中期経営計画の達成に向けた様々な施策に取り組んでいる。創業当初より成長を支えてきたシャッター、ドア等を製造・販売する基幹事業においては、防火・防犯はもとよりIoT化など、変化する社会のニーズを捉え、生活者の視点に立った商品開発を実行していくことで、規模を維持しつつ、収益力強化につながる投資を実施していく。注力事業においてはエコ&防災事業をはじめ、メンテナンス事業、都市の老朽化や住環境の変化に対応するロングライフ事業及び海外事業を展開しており、売上規模(シェア)を拡大していくとともに、新たな事業への挑戦と投資を実施していく。基幹事業によって基盤を強化するとともに、注力事業によって当社グループの未来を担う事業を育て、発展させていき、それらのバランスをとることで、経営のレジリエンスを高めていく。

④当社グループの成長並びに中期経営計画の遂行に向けて必要な人材
当社グループの成長並びに中期経営計画の更なる推進のために、属性を問わず、個性や能力など様々な価値観や視点を受け入れる必要があり、事業を問わず以下の「求める人材」が共通要素であると認識している。
「自ら考え行動し、課題を解決できる人」
「何事にも積極的にチャレンジし、常に前向きに考え行動できる人」
「既存の事業領域に限らない専門的な知見・技術や発想等により、新たな事業領域を創出できる人」
これらを体現できる人材を事業基盤に事業施策を実行していくとともに、積極的にダイバーシティ&インクルージョンを推し進め、多様な能力の獲得や能力の発揮機会の提供を図り、多様化する顧客ニーズへ対応していくことで、当社グループが快適環境のソリューショングループへと成長すると考えている。

⑤多様性を考慮した人材の確保
<主な採用ルート>
現在の採用について、「求める人材」を踏まえ、新卒採用は人事総務部で、中途採用は各事業本部等の事業部門において実施している。
新卒採用については、営業や技術(商品開発・設計・生産技術・SE)など、学生が希望する仕事に配属をする職種別採用を行っており、入社前と入社後のギャップを軽減している。
中途採用においては、主に営業、設計、施工管理を中心に経験者や資格保有者等の即戦力人材を積極的に獲得するだけではなく、必要に応じて当社事業領域に限らない専門的な知見・技術を持つ人材や海外人材を採用するなど、多様な価値観、多角的な視点を取り入れることで組織、人材の硬直化を抑制し、新たな事業の創出や企業の成長につなげている。

<人材の融合>
近年では、事業領域の拡大によるM&A、アライアンスを通じて、考え方・価値観の異なる人材との融合が進んでおり、今後より一層の技術革新や新商品の具現化を進めることができると考えている。

<ダイバーシティ&インクルージョンの観点>
ダイバーシティ&インクルージョンの観点、及び多様な人材の確保に向けて、当社における社員男女比率はおよそ9:1であり、かつ、女性管理職比率が2.2%(単体)であることは経営課題として認識している。今後、働き方改革の推進、新商品や新事業の探索など、当社の成長には女性の視点をはじめとする多様な視点が必須である。そのため、新卒採用における女性採用比率30%を目標として、積極的な採用による社員男女比率のバランスの改善や女性従業員向けのキャリアデザイン研修に取り組み、現状打破を進めている。また、障害者の採用においては、「当社に限らず、どの企業においても戦力となる人材に成長する」を目標に、全国各部門・職種での採用を推進している。あわせて、2022年度より希望するすべての障害者を社員へ身分変更し処遇を改善することで活躍の機会を拡げ、満足度の向上を図るとともに、採用市場における競争力強化を図っている。

⑥人材の育成
<基本的な人材育成方針>
現在の事業施策並びに中長期目標の実現に向けて、事業基盤の強化を図るためには、人材育成への注力が重要と考えている。「求める人材」は前述のとおりであり、様々な採用ルートやダイバーシティ&インクルージョンの観点から獲得を進め、その人材をしっかりと育成していくことが未来に向けて当社グループが成長する礎となると考えている。

<従業員全体の育成>
人材育成の取り組みとして、従業員全体の底上げ、成長を図る研修を実施している。入社時教育をはじめ職位・職能資格に応じた様々な階層別研修(昇格者研修、新任管理者研修など)、スキルアップにつながる教育として、製品知識修得を目的とした研修や「快適環境のソリューショングループをめざして」の実現に向け、目に見えない問題を見つけ、見つけた問題の因果関係を解明する問題解決研修、そして、働き方改革につながる生産性の向上に向けたITリテラシーに関する通信教育等を実施している。

<職種に応じた柔軟な育成>
従来の建築・施工管理などの専門技術のスキルや資格の取得を進めるため、外部講習等を利用した研修を実施し、資格試験の合格者には、新たな資格手当の新設や従来の祝金を増額するなど合格へのインセンティブも付与している。
製造現場等における当社固有の技術や高度な技能を伝承し後継者を育成するため、2007年にマイスター制度を導入している。熟練したスキルを保有する従業員が数多く輩出されることで、メーカーとして製品の安心・安全の提供、多様化する顧客ニーズへの対応や顧客満足度の向上が可能と考えている。
営業のエリアマーケティング研修では、地域特性を考慮した商品・顧客戦略を現場の社員が調査・立案し、部門長にプレゼンテーションをすることで、自身の事業戦略への理解を深めるとともに経営目標との連動や経営に参画する意識の醸成につなげている。

<ダイバーシティ&インクルージョンを踏まえた育成>
ダイバーシティ&インクルージョンの促進に向けては、2021年より、女性の活躍を促進するため、意識改革やマネジメント力向上を目的とした女性従業員向けのキャリアデザイン研修を実施している。さらに、前述のマイスター制度では、現在のマイスター38名(グループ全体)のうち、4名(グループ全体)が定年後再雇用者であることから、シニア層のモチベーション向上とともに、その活躍が当社の成長に寄与している。

<経営陣の考えの浸透>
各研修の冒頭に経営陣が受講者に対し、従業員の成長への期待や会社の姿勢・方向性を説明することで、会社全体でベクトルを合わせ、経営陣の考えを浸透させている。

⑦人事評価、重要ポジションへの登用
当社では、従業員の仕事の取り組み方や成果等を公正・公平に評価することで、従業員の重要ポジションへの登用や従業員のモチベーション向上、ひいては個々の成長につなげていくことが重要だと考えている。

<人事評価>
人事評価においては、多様な人材が持つ能力の十分な発揮や適材適所の配置を進めるため、当社人事制度の根幹である職能資格に応じた保有能力の把握・評価、仕事の達成度・成果を評価する業績評価、そして仕事への取り組み姿勢を評価する情意評価など、多面的に評価することで、従業員の能力の伸長や成果、職務範囲の拡大、上司部下・他部門との協働等、従業員の成長を上司が適切に把握することとしている。また、人事評価の結果は前述の観点に加え、今後の成長へのアドバイスを含め、定期的なフィードバック面談を行うこととしており、評価や課題について十分に話し合うことで目標を明確にし、モチベーションの向上につなげている。これら人事評価を公正・公平に行うには、評価者の評価制度への理解と評価スキルの均一化が必要であることから考課者研修を継続的に実施している。

<重要ポジションへの登用>
支店長、工場長以上の経営幹部レベルの人事異動等については、経営陣自らが現場を訪問した上での情報収集や経験・実績を踏まえ、事業戦略や年度方針に基づく事業施策の実行に最適な人員配置等を実施している。各事業本部における幹部人事異動等についても、これまでの経験や実績、現状分析に基づく最適な人員配置を実施しているが、時には従業員の将来、モチベーション向上ひいては当社の将来を見据え年齢や経験にとらわれない人事配置を行うことがある。

2.社内環境整備方針
<基本的な社内環境整備方針>
当社グループでは、育成し成長した従業員が、モチベーションを維持し長期的に活躍するため、以下のとおり、働き方の改革・支援、健康促進や人権等の基盤の整備を図ることが重要であると考えている。

①基盤の整備(働き方の改革・支援、健康促進)
<働き方の改革・支援>
働き方の改革については、個々のライフスタイルを重視しつつ、多様な働き方による生産性向上や安心して働くことができる環境を重視した人事制度の見直し並びに人材投資を実施している。当社では、柔軟な働き方を可能とするフレックスタイム制度やモバイルPCの導入による在宅勤務並びにリモートワークの恒久化、有給休暇取得率向上によるワークライフバランスの充実のため年次有給休暇の計画的付与日数を5日から7日に増加するなど、すべての従業員が安心して働くことができる環境整備を進めている。
働き方の支援については、育児や介護・疾病と仕事の両立が重要と考えている。育児と仕事の両立として、当社の育児休業制度は、最長3歳までの育児休業が可能であり、2022年度からは、育児休業の開始日から5日間を有給化、産前休暇を出産予定日の8週間前から取得を可能とするなど、性別にかかわることなく安心して育児に係ることができる環境を整備している。介護・疾病と仕事の両立に向けた支援として、失効する有給休暇を積み立て、家族を介護する時や従業員が指定難病にり患した時に利用できる介護・指定難病等休暇制度を制定している。
社会参画による人的成長や企業市民としての積極的な社会貢献等を目的として、地域貢献活動、社会貢献活動や災害復興支援活動等を対象にボランティア休暇を導入し取得を推進している。

<健康促進>
従業員の健康促進に向けては、従業員が健康で仕事に取り組むことが企業成長の基盤であると認識している。長時間労働による過労を防ぐため、時間外労働の目標時間を設定し、仕事の進め方の見直しや業務のシステム化によるDXの推進など生産性向上を図っている。
また、健康診断の再検査受診率100%を目標に掲げ、継続的に社内周知をするなど実施率向上に取り組んでいる他、大型拠点での健康相談の実施、すべての従業員へのストレスチェックの受検勧奨により、体調変化のシグナルの見落としや、疾病のリスクを未然に防ぐ取り組みを推進している。

②基盤の整備(人権、労働安全衛生)
<人権方針の制定>
当社グループでは人権について、これまでもCSR憲章「働く仲間と共に」で人権に関する行動指針を掲げ、人権の尊重に取り組んできている。昨今、国際社会における人権リスクの高まりや、課題の変化に対応し、サプライチェーンを含めた人権マネジメントの高度化を図るため、2022年度、国際規範に基づいた「文化シヤッターグループ人権方針」を新たに策定した。
人権方針では、「文化シヤッターグループのすべての役員及びすべての従業員」だけでなく、「自社商品、サービスに関係するステークホルダー」に対しても、方針の理解と遵守を求めている。

<人権デュー・ディリジェンスの実施(2023年度実施予定)>
当社グループ及び当社グループの商品・サービスに関連するステークホルダーの人権に対する負の影響を特定し、負の影響を防止・軽減するとともに防止・軽減の対応状況や結果を追跡し、最終的にどのように負の影響に対処したのかを説明・情報開示する人権デュー・ディリジェンス実施ガイドラインを策定し、2023年度以降、実施していく予定である。
当社グループにとって、「快適環境のソリューショングループ」として事業活動を行う上で、社内だけでなくサプライチェーン全体で人権を尊重し、多様性を認め合うことは必要不可欠な要素であり、今後も持続可能な社会を実現するために、人権尊重の取り組みが必要と考えている。

<労働安全衛生>
労働安全衛生においては、安心・安全な職場環境と健康を確保することが、人的基盤を支える根本であると認識している。当社は、安全衛生管理規定に従い、全社に安全衛生管理体制を確立し、災害を防止するために必要な措置を積極的に行っており、事業場における労働災害防止のため、各事業場での安全衛生委員会を中心に、機械、作業、環境等による危険に対する措置の実施や法令で定められた安全衛生教育、作業環境測定等に取り組んでいる。

<リスク管理>
当社では人的資本の問題を経営上の重要な影響を及ぼす事項ととらえ、日常的には各事業本部・支店や本社で発生する諸問題等について各部門が対応することとしており、適宜、それらの情報を人事総務部が取りまとめ、諸問題の解決策や目標を達成するための施策を検討している。今後は、人的資本開示ワーキンググループが、人的資本に関する重要な影響を及ぼすリスクと機会を識別し、それに対応する指標及び目標を設定することとし、必要に応じて、サステナビリティ委員会で検討を行い、常務会、取締役会に進言する役割を担う。なお、人的資本開示ワーキンググループは、サステナビリティ委員会の下に人事総務部を中心に、CSR統括部、経営企画部、経理部、営業企画部、製造企画部のメンバーによって構成されている。

<指標と目標>

なお、当社グループは、「文化シヤッターグループ人権方針」及び「ダイバーシティ&インクルージョンに関する方針」を策定し、当社WEBサイトで開示を行っている。

<文化シヤッターグループ人権方針>
https://www.bunka-s.co.jp/csrinfo/wp-content/uploads/2022/11/humanrights_jp.pdf

<ダイバーシティ&インクルージョンに関する方針>
https://www.bunka-s.co.jp/db/wp-content/uploads/2023/06/diversity_inclusion.pdf