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ステークホルダーダイアログ2017

産官民の連携で実現する
大規模災害に強い製品づくり

「進化する快適環境ソリューショングループ」をめざし、「エコと防災」をキーワードに事業を展開するBXグループでは、近年多発する未曾有の大規模災害への対策を最重要の社会課題であると考え、グループ一丸となって防災ソリューションの開発・拡充に取り組んでいます。
今回のダイアログでは、懸念される大震災に備えた開口部製品の開発を取り上げながら、社会的課題やメーカーの責任について、関係者の皆様と意見を交しました。

耐震実験設備の導入


文化シヤッター
品質保証部
ライフイン環境防災研究所
課長 日髙 和幸
日高 文化シヤッターは創業以来、防犯・防火・防煙等の商品やサービスを通じて「防災」に取り組み、社会課題の解決に貢献してきました。近年、多発するゲリラ豪雨の被害対策として「止水事業」にいち早く参入し、「誰でも・簡単に・素早く」をコンセプトに多数のソリューションを開発し提供しています。
また、当社では新たに耐震試験装置を導入しました。地震は揺れの特性によって、シャッターやドアなどの非構造部材が受ける影響が大きく変わります。そのため地震の動きを再現する3次元振動台を用いて製品の耐震性能を検証し、蓄積したデータを開発に反映していくことで、より「安心」「安全」な製品づくりを進めていきたいと考えています。
高井 西松建設では阪神・淡路大震災を教訓として、最新技術に関わる実験施設の充実が必要であると考え、当時としては最大級の振動台を導入し、技術開発に活かしてきました。今回、文化シヤッターさんから耐震試験装置導入のご相談があり、振動台を支える基礎部分の施工を通じて、ご助言させていただきました。
室星 建材試験センターは第三者証明機関として、建設材料、建設部材、建築設備に関わる試験をはじめ性能評価、製品認証などを行っています。その中で私の所属する部署では、シャッターやドアなどの構造試験を行ってきました。東日本大震災や熊本地震といった大きな震災の発生により、耐震関係の業務が多くなりました。今後も検証ニーズの増加が予測されるため、文化シヤッターさんの振動台導入は時機を捉えた意義のある取り組みであると思います。

震災に対する非構造部材の課題


西松建設株式会社
技術研究所
建築技術グループ
上席研究員
髙井 茂光 様
高井 東日本大震災の時は現行の耐震基準が機能して、構造部材の被害は比較的軽度でした。しかし、避難所となる予定の体育館で天井が落ちて使用できなかったなどの事例があり、建物の機能を保全するためには非構造部材が重要課題の一つであるとの認識が広まっています。
土屋 ビルなどの建物は古ければ耐震補強することで構造的な健全さを持っていますので、課題はやはり非構造部材ではないかと思います。建物が倒れなくても、外装が落ちたり内装が潰れたりする問題があります。ところが、建築業界では非構造部材の耐震性能について踏み込んだ議論がなされておらず、建築建設の中で処理しきれない課題も多いのが現状です。
室星 東日本大震災後、国土交通省などにより非構造部材の試験方法や評価方法が標準化され、それをもとにした開発の流れができてきました。今後、シャッターやドアの耐震に関する試験・評価の標準化の動きが出てくるのであれば、私たちも試験方法などの検討には積極的に協力していきたいと思います。
日高 そういった意味では、今回ライフイン環境防災研究所に導入した耐震試験装置を活用して、試験・評価の標準化の動きをデータの面で後押しできるようにしていきたいと思います。

大震災に備えた防火ドアの共同開発


株式会社日建設計
技術センター
ファサードエンジニアリング室
土屋 孝司 様
土屋 建設計では東日本大震災後に被害調査を行いましたが、建物の安全性確保には非構造部材の耐震性能も重要であることがわかりました。そこで、震災に強い建物づくりをめざして、内外装材などのメーカーに耐震性能に優れた製品の共同開発を呼びかけましたが、その中の1社が文化シヤッターさんでした。
日高 当社でも東日本大震災後にシャッターやドアの被害を調査しましたが、防火ドアが閉まらない、開かないなどの状況が見られました。防火ドアは、地震発生後に閉まることで火災の延焼を防ぎ、人が避難する際には開かなくてはなりません。従来の防火ドアは、地震発生時でもある程度のドア枠の歪みなら充分機能を果たしますが、大規模な震災時であってもきちんと機能を発揮する防火ドアの開発が喫緊の課題であると考え、グループ会社のBX鐵矢と共に共同開発に臨みました。
土屋 今回の共同開発で私たちは建築的な視点から建物全般についてアドバイスさせていただきましたが、ドアに関しては、大地震を想定して建物本体構造の変形量を大きく設定し、それを開発与件として提示させていただきました。

BX鐵矢株式会社
生産管理課
係長 今林 哲也
今林 ドア枠が大きく変形すると、扉がドア枠や床面にぶつかり開閉できなくなります。それを解消するためにドア枠の開口を大きくすると、扉が閉まっても扉と上枠の間に隙間ができ、また床面との隙間が規定より大きくなり、火が回ってしまう。そこで、今までなかった「変位吸収機構」という装置を新たに開発したことで、課題を解決することができました。
土屋 今回の開発では、例えばボードの変形とドアの変形をどう考えるかなど、他部材の納まりや工法を正しく反映させることが重要でしたので、私たちの知見も活かせたかなと思っています。
日高 設計会社さんだけではなく、業界全体で知見を出し合うことが必要だと感じています。そのような機会があれば、進んでチャレンジしたいと思います。

BXグループへの期待・要望


一般財団法人
建材試験センター
中央試験所構造グループ
統括リーダー
室星 啓和 様
室星 今回導入された振動台は、非構造部材の振動特性を検証する上で十分な性能を有しているので、大いに活用して試験・評価の標準化に取り組んでいただければ、私たちの協力できる機会も増えるかと思います。また今年、BXグループには耐震に力を入れている会社も加わりましたので、シナジー効果が発揮されることを期待しています。
高井 今後、建物機能の維持管理、あるいは震災時の被害把握などにおいて、センサー技術を含めIoTが活用される時代になると予想されますが、シャッターやドアなどにも活用していただき、より「安心」「安全」な社会づくりに貢献していただきたいと思います。
土屋 地震のほかにも、津波や多発している竜巻への対応も課題です。津波では水圧に耐え得るドアの開発、竜巻では突風で物が衝突しても飛来物が室内に飛び込んでこないシャッターなど、建築建設と一緒になって課題に取り組んでいって欲しいと思います。

ダイアログを受けて

今回のダイアログで改めて、業界の枠を超えて産官民による協働事業の可能性を感じることができました。今後はステークホルダーの皆様のお力をお借りしながら、企業単独ではなし得ないソリューションを生み出し、社会課題の解決につなげていきたいと思います。

執行役員 CSR統括部長  松山 成強