ステークホルダーダイアログ2018

社会貢献を見据えた製品づくり
玄関引戸と土間 〜新しい生活空間とライフスタイルを提案〜

ダイアログ開催概要

開催日:2018年6月5日(火)
参加者:9名(社外6名)

明和地所株式会社:太田 明 様、堀江 裕樹 様、吉野 奈美子 様
横浜ビル建材株式会社:前川 智彦 様、菅 逸雄 様、大槻 孝之 様
文化シヤッター株式会社:上田 徹、久保 貴博、齊藤 貴敏

※ 掲載している所属・役職はダイアログ開催時のものです。

こちらもご覧ください 引戸開発の歴史

明和地所株式会社

開発事業本部 副本部長
太田 明 様(中央)

開発事業本部
マンション事業建設三部 部長
堀江 裕樹 様(右)

開発事業本部
マンション事業建設一部
建設課 係長
吉野 奈美子 様(左)

社会背景を捉えたマンションづくり

太田 私ども明和地所は、新築マンションの分譲を中心に1986年から事業を展開しています。「想いをかなえ、時をかなでる。」というブランディング戦略のもと、お客様のニーズを確実に捉え、長い間満足して住んでいただけるようなマンションを提供し続ける企業をめざしています。社会貢献を中心に据えたマンションづくりという点においては、御社のビジョンである「ライフ・イン」とも共鳴する部分が多いと思っています。クリオ小杉陣屋町はまさにその指針を具現化し、成功させたケースです。
吉野 私はその土地に対して建物、デザインの最適化を考え、設計、施工、内覧会、お引渡しまで一連のプロジェクトの建設担当を担いました。
前川 私ども横浜ビル建材は、今年創業34年を迎えます。ビル用建材全搬の販売代理店を行っています。近年では自社での製造も行っていますが、お客様のニーズにいつでもタイムリーにお応えできるような体制を整えています。
今回のケースで言いますと、クリオ小杉陣屋町の玄関戸を受注し、その設計から現場施工、アフターメンテナンスまで弊社が請け負いました。
大槻 明和地所様から今回の案件情報をいただき、事業計画の段階から参加し、商品のご提案をさせていただきました。

新しい暮らし方提案、土間のあるマンション

吉野 今回はまず小杉陣屋町の地歴を辿るところからスタートしました。陣屋というのは江戸時代に藩庁が置かれた大名屋敷のことで、ここは江戸と駿府をつなぐ中原街道にある、大変賑わった土地柄です。今でも町に当時の面影が残っていますので、それをデザインに反映できないかと。江戸時代の粋な生活、粋なデザインを現代に蘇らせる、それがテーマでした。もちろんデザインだけではなく、生活様式そのものにも着目し、そこから“土間のある生活空間”という発想につながりました。
堀江 等々力緑地や多摩川が近いので、サイクリングやバーベキューなどを楽しむ方もいらっしゃる土地柄。土間があれば自転車やいろいろな生活道具を置くスペースにもなります。その点も土間を採用した理由の一つです。高級な自転車は駐輪場には置きたくないでしょうし、メンテナンスのスペースなども必要になりますしね。
吉野 土間はもともと屋外と屋内の中間領域で、炊事をしたり農耕機具を置いたりする場所であり、コミュニケーションの場でもあったわけです。こういう空間の使い勝手を活かすには、やはり開き戸ではなく、引戸しかない。自転車などの出し入れは引戸が圧倒的に便利ですし、スペースを有効に使えます。モデルルームで内覧されたお客様も、30代から40代の小さいお子様がいらっしゃるご家庭が大半でしたが、ベビーカーの出し入れなど、大型の収納を必要とされる方たちが多かったですね。
太田 お客様からは、土間プランに非常に高い評価をいただきました。モデルルームでも1階の土間プランを積極的にアピールしましたが、それが功を奏したのか、実際に1階から先にご売約をいただきました。通常、高層階の方が人気が高い中、これは画期的なことです。
前川 私にとってマンションの玄関で土間スペースというコンセプトは、全く新鮮な体験でした。玄関と言えば靴を脱いですぐに上がる、という感覚だったのが、例えばペットの飼い方などにも影響を与えるような、使い方のイメージがどんどん広がる新しい生活空間なんだという認識を土間は与えてくれました。

横浜ビル建材株式会社

専務取締役執行役員
東京支店 支店長
前川 智彦 様(左)

執行役員
改装部兼施工管理部 部長
菅 逸雄 様(中央)

開発事業本部
東京支店 営業二部 担当課長
大槻 孝之 様(右)

マンション玄関引戸がクリアすべきだった課題

堀江 2003年に竣工した物件で、玄関に引戸を採用したマンションがありました。当時、引戸と言えばやはり高齢者ですとか車椅子での利用というのが主な目的で、そのマンションのコンセプトもそうでした。しかしクリオ小杉陣屋町は30代から40代のファミリーがターゲットですから、全くコンセプトが違います。その意味では今回の土間のある玄関というのは、新しい試みだったと言えます。
前川 今回明和地所様からお話しがあった時、文化シヤッターさんにご相談して、発売を予定している新商品がある、とご紹介いただいたのが「ヴァリフェイス Ae」でした。その時点ではまだスケジュール的に間に合うかどうか、試験などの課題も残っていたのですが、吉野様にその話をさせていただき、モデルルームのオープンに間に合わせられれば、ということになりました。
太田 15年前とは全く違ったニーズに応えるための引戸を新たに開発していただき、モデルルームオープンまでに間に合わせていただいた、という流れですね。
上田

私どもは古くからスチールドアと呼ばれる片開きの開き戸を製造・販売しており、1980年代の初頭からは、引戸にも力を入れてきました。とは言っても当時は屋内での使用が中心で、病院ですとか老人ホーム向けが主でした。ドアの重量をいかに軽くするか、操作性を上げるかに注力しまして、1993年頃には通常の2分の1から3分の1の力でも開けられる引戸を開発しました。一方で、一般のマンションではほぼ100%の玄関に開き戸が採用されており、私たちはそこに可能性を見出しBL玄関という引戸を開発したのですが、デザインや重量など、課題は山積みでした。しかし開き戸並みのデザインと機能・性能があれば、一般住宅にも必ずニーズがあると考え、屋内用ですが、「ヴァリフェイス Ai」という対震性能を付加した引戸を開発し、続いて屋外用を本格的に開発し始めた頃に今回のお話しをいただいたわけです。

「優良住宅部品(BL部品)」は(財)ベターリビングにより、品質、性能、アフターサービス等に優れていると判断された住宅部品です。BL玄関は、防犯性の向上や高齢者等への配慮といった「社会的要請への対応を先導するような特長も有する住宅部品」として「BL-bs部品」(BL-bs:Better Living for better society)の認定を受けています。

文化シヤッター株式会社

ドア・パーティション事業本部
技術部 部長
上田 徹(右)

ドア・パーティション事業本部
技術部 主任
久保 貴博(中央)

ドア・パーティション事業本部
マンションドア部 係長
齊藤 貴敏(左)

玄関引戸の可能性と期待される進化

太田 クリオ小杉陣屋町は先ほども言いましたように、比較的若いファミリー層を意識したアクティブなコンセプトで作りましたが、それをさらに発展させると、子どもが独立した後のシニア世代のニーズにも充分にお応えできると思っています。夫婦二人になった時の生活の楽しみ方、リタイヤ後の豊かな生活に対するニーズを考えると、土間のある空間、玄関引戸のマンションは、今後さらに伸びてくると確信しています。まさに社会貢献を見据えた製品づくりと言えるのではないでしょうか。
堀江 例えば坂の多い住宅地では、高齢者への負担が大きく、ある意味ゴーストタウン化しているというような事象もあります。都心回帰という意味ではありませんが、地方でも駅に近いマンションの需要が高まっています。私たちの土地取得もそのことを考慮していかなければならないと思います。
太田 一戸建てのバリアフリー工事が非常に高額で、庭の手入れなども面倒なことから、戸建てを手離し、駅に近いマンションに移るというニーズですね。そのニーズは確かにどんどん高まっています。ふだんから暮らしやすく、将来足腰が弱ったとしても生活が楽で、家族にも安心、そのような玄関引戸は今後もっと注目されるだろうし、大変理にかなっていると思います。
堀江 コストとスペースの問題がありますが、今後は例えば自動車のドアのように鍵をかざすことで玄関ドアが開いたり、開閉速度の調整ができたり、センサーによって自転車や車椅子が楽に通れるような工夫が求められるでしょうね。もうひとつ、重要なポイントは開き戸とのコスト差をどこまで縮めていけるかです。お客様のニーズとの兼ね合いを図りながら、コスト的にもお客様に喜んでいただけるものとしたいですね。
施工管理、アフターケアという観点から一番望むのは、壊れない、傷つきにくい製品ということですね。それが一番ありがたい。表面材の工夫によってもメンテナンスが格段に楽なります。
前川 扉交換が容易にできるといいですね。
堀江 マンションの24時間換気による負圧で、扉は引っ張るより横に引いた方が開けやすい。それも引戸の一つのメリットです。
太田 10年後には本当にそうなっているかもしれませんよ。
上田 日本には昔から引戸文化というものがありました。お子様から高齢者の方までをサポートする使い勝手のいい製品を作り続けることで、引戸文化があらためて見直されれば嬉しいですね。今後の製品の改良も含め、少しでも早く次期商品、良い製品をご提案させていただけるよう、頑張ります。