第三者意見

駿河台大学名誉教授・博士(経営学)
一般社団法人
日本コンプライアンス&ガバナンス研究所
代表理事/会長
水尾 順一様

(株)資生堂から1999年駿河台大学助教授、2000年教授を経て、2018年3月末退職後名誉教授に就任、現在に至る。(株)ダイセル社外監査役。2010年ロンドン大学客員研究員ほか。著書『サスティナブル・カンパニー〜「ずーっと」栄える会社の事業構想』(株)宣伝会議など多数。

企業でCSRの実務を推進し、大学でその理論構築をして「CSRの理論と実践の融合」を社会に促進してきた立場から、BXグループ(以下、同社)の「CSR報告書2020」について以下に第三者意見を申し述べます。

● 高く評価できる点
“価値創造に向けた戦略である「技術力」と「施工力」の優秀性について知ることができます。

創業65周年を迎える同社には、建築文化に寄与する快適環境のソリューショングループとしての「技術力」と「施工力」が育まれてきました。その背景には創業の精神「誠実をもって社会に奉仕する」と、持続可能な発展を支える「社是」「経営理念」があり、全社一体となった「創造・挑戦・革新」のチャレンジ精神によって、今日まで磨きがかけられてきたことが理解できます。
「技術の文化」とも評価される同社の「技術力」は、ライフイン環境防災研究所等を通じて底上げされ、課題解決への挑戦によって磨かれてきたことを、価値創造の記事をとおして、知ることができます。また、サプライチェーンと一体になった「施工力」は、「文化シヤッター 設計施工 理念と行動」をもとに教育・研修体制の強化拡充などによって共有されてきたことがよく理解されます。
企業には、時代が求める課題に適応させるべく、あるいは時として課題を先取りして挑戦していく姿勢が求められます。建築文化の革新に向けて挑戦してきた同社は、世界的にエコと防災が重要課題となっている今日の時代背景を踏まえ、重点事業テーマとして「環境ソリューション」と「防災ソリューション」を掲げ、上記の「技術力」と「施工力」によって積極的な取り組みを進めています。
環境ソリューション活動では、環境負荷ゼロ、資源循環型、自然と共生型、それぞれの社会実現に向けた取り組みを知ることができます。また、防災ソリューション活動では火災、大規模地震、気候変動による水害などから人の命や都市機能そして広く社会全般を守り安心・安全を提供する取り組みを進めてきており、それらの様子を当レポートから知ることができます。
こうした社会的課題の解決と経済的価値の追求が一体となったCSV活動をとおして、今日的課題であるSDGsへの貢献とさらにはESGへの取り組みを知ることができます。

● 今後に期待する点
仲間たちと一体になったボトムアップによる、ESG経営への参画を期待します。

ESG経営を進めるうえで重要なことは、トップインタビューにも述べられている通り、「従業員一人ひとりが理解を深め、SDGsを意識しながら自分たちの仕事を改善していくという“経営への参画意識”を高める」ことだと感じます。
それには、ESG経営に対するトップのコミットメント(宣言)を受けて、現場の仲間たちと一体になったボトムアップの取り組みを進められることが効果的です。たとえば、「ESGサポーター(仮称)」のような仲間たちを募り、彼ら・彼女たちと一体になった活動を通じて、現場の理解と納得による「共感」を得ることで、活動にドライブをかけることができます。
この共感とは、『国富論』の著者で有名な英国の経済学者アダム・スミスが、別の著書『道徳感情論』の中で「Sympathy(シンパシー:共感)」と表現しています。お互いに相手の感情を共有し、感情移入を通じて喜怒哀楽を分かち合い認め合うことで生まれる相互認知の感情で、社会的に存在意義のある人間固有の価値なのです。
「ESGサポーター(仮称)」は、社内における仲間たちの相談員としての機能や、ESG経営の浸透・定着を進める先導役としての機能もあわせ持つ組織だからこそ、仲間たちの心情というメンタルな側面に働きかけ、「共感」を得ることも可能になるのです。
仲間たちと共に進める同社のESG経営が、SDGsへの貢献、さらにはESG評価の向上、最終的には企業価値創造に結びつかれることを心から祈念申し上げます。

第三者意見をいただいて

文化シヤッター
執行役員
CSR統括部長
松山 成強

BXグループのCSR報告書につきまして、引き続き貴重なご意見を頂戴し、誠にありがとうございます。創業65周年を迎え、本報告書ではこれまでBXグループが拠り所としてきた創業の精神を見つめ直し、改めて企業としてどうあるべきか、果たすべき役割についてステークホルダーの皆様と共有する内容となりました。社会課題の解決に直結するエコ・防災事業は、さらに追及すべき事業であり、そしてその努力がグループの成長・発展につながるのだということを、従業員一人ひとりが自覚することが必要不可欠であると考えています。まさに昨年の第三者意見でご指摘いただいた従業員の「考動力」がBXグループを強靭な組織に創り上げるのだと思います。
本報告書においては、「BX-CSV」と称した社会と共有する価値の創造を支える「技術力」と「施工力」を、BXグループの戦略的な強みとして取り上げました。BXグループが社会に提供する価値を形づくり、安心・安全を確保しながら「オンリーワン」を実現させるこの2つの強みについてご評価をいただけたことは非常に嬉しく、今後の励みになります。
この度アドバイスを頂戴いたしました共感をエネルギーとする従業員主導の取り組みにつきましては、トップインタビューにもあります通り、従業員の経営への参画意識の醸成と、ソリューションを自分事と捉える主体性を育てることが、BXブランドを創り上げる人財集団の形成にも重要であると再認識いたしました。グループ全体が共感力を高め、切磋琢磨することがグループの総合力の向上、さらには企業価値の向上につながると考えます。
今後もBXグループは持続可能な社会の構築をめざし、さらなる努力を重ねてまいります。